GMO REGISTRY

GMOドメインレジストリの
事業活動が
ソマリア復興の礎に

ソマリア連邦共和国のドメイン「.so」 ソマリア連邦共和国のドメイン「.so」

新gTLD(一般トップレベルドメイン)導入の動きに合わせて、2009年に設立されたGMOドメインレジストリ。2016年1月に「.shop」の権利を獲得し、9月に一般登録を開始してから約2年が経ちました。この2年間で、登録件数は64万件となり、新gTLDの登録件数ランキングでは世界7位にランクインしています。

そんな「.shop」獲得も、設立直後の2010年にGMOドメインレジストリが初めて運用した「.so」の実績があったからこそ成し遂げられたということは、あまり知られていません。「.so」は、ソマリア連邦共和国のドメイン(ccTLD)のこと。このドメインの獲得・運用が、今もなお紛争が続くソマリアをどのように支援しているのか、GMOドメインレジストリの塚原社長に伺いました。

「.so」ドメイン運用開始までの経緯

  • 記者

    「.so」ドメインの魅力は何だったのでしょう?

  • 塚原

    レジストリ事業として、ccTLDの運営支援を行うことが1つのミッションでしたが、先進国はすでに自国で運営している状態でした。そのため、発展途上国のドメインに狙いを定め、その中でも文字列や語感のいい「.so」に目をつけました。英語では「I think so.」のように使いますし、中国語では「検索」という意味にも使われるので、ネットでのニーズは高いと思いました。実際、当時の中国では大ヒットしました。

  • 記者

    ソマリアといえば、今も紛争が続くアフリカの国ですよね。

  • 塚原

    東アフリカにあって、先が尖った形をしているので「アフリカの角」と呼ばれている国です。海があり魚も豊富で、古くはイギリスとイタリアの植民地だったことから、西洋の文化が交じり合う国際的で美しい国だったそうです。しかし1988年に内戦が起こり、無政府状態となってからは様相が一変してしまいました。

    内戦の激化で深刻な状態に陥っていたソマリアに、アメリカが平和維持のための軍事介入を行っていたのですが、18名ものアメリカ兵が殺害されるという「モガディシュの戦闘」が1993年に発生。後に「ブラックホーク・ダウン」という映画でも描かれたのですが、その凄惨な事件を受けてアメリカも軍事介入をやめ、完全な無法地帯となってしまいました。

    一時国際問題にもなった「ソマリアの海賊」も、無法地帯になってしまったことで世界中から船が来て漁場を荒らされてしまい、彼らが生きるために海賊にならざるを得なかったという、負の連鎖によるものです。

  • 記者

    治安が悪くアプローチもしにくい状態に思えますが、どのような経緯で「.so」のドメイン獲得・運用支援を進めたのでしょうか。

  • 塚原

    2010年3月にケニアのナイロビで開かれたICANN会議にソマリア政府も出席することを知り、コンタクトをとって会いに行きました。そこで通信省の責任者(現ソマリア大臣)に、「.so」のドメイン運用支援業務についてご理解いただき、すぐに話を進めたんです。翌4月に来日いただき契約書のドラフトを作成し、6月にソマリア通信省大臣と熊谷代表がドバイで調印式を行いました。当時のソマリア政府は、国連に承認されていたとはいえ、まだ暫定政府でした。

  • 記者

    「.so」の登録開始は、話題になったんじゃないですか?

  • 塚原

    当時は、数年ぶりの新ドメインということもあって、レジストラの皆さんは非常に協力的でした。業界内でもかなり盛り上がり、我々GMOドメインレジストリの名前を認知される良いきっかけとなりました。この実績があったからこそ、「.shop」の申請時に我々がちゃんとレジストリ事業の経験がある会社だという信頼を得られたと思います。

  • 記者

    「.so」の運用支援は今も続いているのでしょうか?

  • 塚原

    2015年7月に政府事情により終了しました。「.so」のドメインビジネスの土台を作ったことで、ソマリアの政治家の方々はみなさんGMOインターネットグループのことをご存知です。今は現地で何もしていないにも関わらず、僕たちはソマリアで有名なんですよ。

ソマリアはアラビア湾に面するアフリカの国

20年ぶりに国際郵便が届くように

  • 記者

    GMOドメインレジストリは、どのようなサポートをしたのですか?

  • 塚原

    ドメインビジネスのいいところは、運営の仕組みができあがれば、多少のメンテナンスは必要ですが、ほぼ自動的に利益を積み上げられるところです。我々が「.so」ドメインを獲得して顧客開拓をし、運営する仕組みを作り上げるところまでを行い、最終的にすべてをソマリア政府にお渡ししました。それが今も国の収益につながっています。この収益は公共性の高い事業に使われていて、万国郵便連合(UPU)のメンバーシップフィーを払えるようになり、再加入することができたという嬉しいニュースも入ってきています。内戦が続いて国が貧しくなり、支払いが滞っていたのですが、再加入したことで20数年ぶりにソマリアに国際郵便が届くようになったんです。ソマリアの大臣が来日された際、日本からソマリアに手紙を送ってUPU再加入を喜ぶ場面もあり、非常に印象的でした。同様に、国際電気通信連合(ITU)の正式なメンバーにも戻ることができましたし、日本の「あしなが育成会」とソマリア政府が協力して、ソマリアの若者のための支援事業を進めているそうです。

  • 記者

    「.so」の収益が国の復興を支える資金源となっているのですね。紛争地ということで、ドメイン運営を成しえるための困難も大きかったと思いますが、特に苦労されたことを教えてください。

  • 塚原

    事業を軌道に乗せるまでが大変でした。最初、我々が国から不当に「.so」を奪ったと間違った情報が拡散されてしまった事で、ソマリア国民から批判を受けたんです。その後、キーマンだったソマリアの大臣がきちんと訂正し、むしろ「.so」の収益が社会貢献につながっていることを説明していただき、それが大統領にまで伝わってGMOインターネットグループの名前が良い意味で広がりました。

    また、ソマリアにはデータセンターがなく、メールサーバーを設置することができなかったため、Googleに協力を仰ぎました。Google本社に連絡をしたところ、ちょうどGoogleもソマリアでサービスを展開したいと考えていたところだったため、すぐにGoogleのアフリカ担当の方を紹介してもらい、彼らに色々協力していただきました。中東にあるGoogleのサーバー内にGmailを設置し、ソマリア政府のアカウントを作成し、さらに、ソマリア語で入力や操作ができるよう、言語対応もしていただきました。

    その後、ソマリア政府用のメールアドレスのルール作りもお手伝いしました。アフリカや東南アジアでは、政府でさえフリーのメールアドレスを使うことがあるのですが、日本やアメリカの事例を紹介し、ソマリアの政府高官は「gov.so」というドメインを使うようになりました。こうした、正統性のあるきちんとしたメールアドレスを使っている国は、アフリカでは大変珍しいことです。

  • 会談の様子
  • 調印の様子

国や地域に貢献する、ドメインが持つ可能性

  • 記者

    メールサーバーの調整やドメイン運用ルールの作成などもサポートされたんですね。正直、レジストリ業務の域を超えたサポートだと思うのですが。

  • 塚原

    確かに、通常のレジストリ業務ではありませんが、社会的責任と言いますか、公共性の高い事業だと思って業務にあたっていました。お会いしたソマリア政府の方々の多くは、素晴らしい政治観を持たれていて、何とか国を変えよう、いい方向に持っていこう、と真摯に向き合っている人たちでしたので、僕たちも心を動かされて、GMOドメインレジストリの仲間で一丸となって尽力させていただきました。

  • 記者

    会社を挙げて支援したことが、復興を目指すソマリアの基盤づくりに役立っているんですね。

  • 塚原

    ソマリア政府の方々には非常に感謝されました。2014年にソマリア大統領が来日されて、難民援助活動に尽力された元UNHCRのトップだった緒方貞子さんと会談された際に、ソマリアが復興に向けて歩んでいる一例として我々GMOインターネットグループの話をしていただいたとお伺いしています。

    ドメインビジネスは、もちろん登録者数を増やしていくことも大事ですが、国や地域のTLDなど公共性の高いものもあり、社会貢献につながる事業でもあります。「お名前.com」などレジストラと呼ばれるドメイン登録事業者を通じてユーザーにドメインを販売しながら、世界中にドメインへの理解や活用を広めていくことも我々の使命だと考えていますので、グループ内外のレジストラの皆さんの力をお借りしながら、これからもドメインの普及に努めていきます。

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